康秀街道〜こうしゅうかいどう〜  駒井僧侶による執筆です。月々移り行くお寺のお話をお楽しみ下さい。

反省だけなら犬でもできる!

 今年は年明けから寒い日が続きました。 ここ川口市からそれほど遠くないさいたま市でも、史上最低気温となる氷点下9.8度という気温を記録し、暑さには慣れている我々は寒さには弱く、雪国の人からすれば珍しいことではないかもしれませんが「凍てつく」という表現が当てはまるような日もありました。 この寒さもなかなか和らぐこともなく、この冬は寒い日が続くと思うと少し憂鬱な気持ちになります。
 また、20センチを超えるような積雪もあり、錫杖寺ではまだまだ日陰の雪が融けずになかなか困っていますが、それでも信心深い方はご朱印を求めお参りに来山し、厄払いのご祈祷に多くの方が来山します。
 今年も少しでも錫杖寺のことや仏教のことを中心に、できるだけわかりやすくこの「康秀街道」にて伝えていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
 今年のお正月はとても寒い日でしたが、それでもありがたいことに多くの方のご参拝をいただきました。 太陽が当たれば非常に暖かいのですが、テントの奥は日が当たらないため、手を温めながら朱印やお札やお守りを書いていました。 こういう寒いときには甘酒が恋しくなるものですが、これは参拝いただいている方もみな同じ気持ちのようで、昨年より全体量を増やしたのですがそれでも午前中に甘酒はなくなってしまいました。

 さて、毎回最初のお話は干支にちなんだお話をしているので、今回も干支の「戌」にならい「犬」に関するお話をしたいと思います。 あまり仏教と犬が結びついている話は多くないのですが、今回も仏教説話集 『ジャータカ』 に納められている代表的なものを紹介したいと思います。
 むかしむかし、ある墓地に多くの野良犬が住んでいて、白色の犬の王がその群れを束ねていました。
 ある時、その国王の愛馬の革の手綱が食べられてしまうという事件が起こってしまいました。 この国王はかんしゃく持ちであったので、すぐに犯人捜しを始めたところ多くの犬の足跡が見つかりました。
 家来たちは国王に 「犯人はどうやら犬のようです、野艮犬の仕業でしょう」 と報告したところ、国王は直ちに 「ならばすべての野艮犬を殺してしまえ」 と命令を出しました。
 野良犬たちは国王の命令により無差別に殺されていきました。 しかし、犬の王も黙ってそれを見過ごすわけにはいきません。 犬の王は仲間たちに問いただしました。 しかし、当然のことながら城の中は警備も厳重で、とても忍び込めるような状況ではありません。 仲間たちは犬の王に 「城内の国王の犬が犯人だろう」 と伝えました。
 仲間の話を信じた犬の王はひとりで城へ乗り込み、国王と直接話すこととなりました。
 そこで犬の王は 「なぜ我々を殺そうとするのですか?」 と尋ねたところ、国王は 「わたしの愛馬の手耶を食ったからだ。 だからすべての大を殺せと命じた」 と答えました。
 すかさず犬の王は 「それは国の全ての犬ですか?」 と尋ねたところ、国王は 「城内の犬は別だ」 と答えました。 犬の王は続けて 「それはおかしい話です。国王はご自分の愛馬や愛犬がかわいいばかりに、王としての道を見失っています。一国の主たるもの、物事を判断するには、つりあった天秤のようにどちらにも傾かない公平さがなければなりません。血統の正しい王の犬はそれだけで罰を受けることなく、野良犬は殺される。血統や毛並みだけで罰を受けずに弱いものだけが殺される。果たしてこれが国王としての判断なのですか?」 と強く訴えました。
 しかしこれを聞いた国王も黙ってはいられません。 犬の王に 「では誰が犯人なのだ」 と強く尋ねました。 犬の王は間髪入れずに 「国王の愛犬です」 と答えました。 すると国王もただちに 「証拠でもあるのか」 と声を荒げました。 しかし、犬の王は冷静に 「では証拠をお見せしますので、国王の愛犬を連れてきてください」 とお願いしました。 そして 「バターと薬草を食べさせてください」 と国王にお願いしました。
 犬の王に言われるがままに国王の愛犬にバターと薬草を食べさせたところ、国王の愛犬は革を大量に吐き出しました。 その革はなんと愛馬の手綱だったのです。
 これにより国王は改心して、野良犬も同等に扱うことを決めました。 ちなみにこの犬の王は釈尊でありました。

 人間どうしても自分の都合のよい方向に物事を考えたくなるものです。 しかしながら、それが許されるということはありません。 まして、国王のように国を治める立場となればなおさらです。
 今年は「戌」ですが、この「戌」の守り本尊さまは「阿弥陀如来」です。 この「阿弥陀如来」は一切差別をすることなくすべてを平等に扱います。 もちろん、六道輪廻の地獄から浄土にいるすべてのものを平等に扱い、手を差し伸べてくれる仏さまなのです。
 もし昨年の自分の行動を振り返り、この話のように自分の思い込みや自分勝手な行動をしてしまったならば、今年一年は反省して精進すればきっと「阿弥陀如来」が力になってくれます。 共に一年間しっかりと精進していきましょう。

合掌

(2018.01)
TOPヘ


新年のごあいさつ

 まず初めに、謹んで新しい年を迎えることができましたことを心よりお慶び申し上げます。 今年も1年の無事を祈り、錫杖寺では僧侶ならびに関係者が一丸となってご本尊延命地蔵菩薩さまにご祈願をしております。 無事に新年を迎えられたことを慶び、今年1年が昨年よりもよい1年となるようにみなさまもお祈りください。
 今年は戌年になります。 戌=犬とうことで、イメージを考えますと昔ばなし「桃太郎」にも登場する十二支の中では大変親しみのある動物だと思います。
 犬というと「ワン」という鳴き声を思い浮かべると思いますが、この犬の「ワン」という鳴き声にちなんで、今年は目標を設定して「ナンバーワン」(=No.1)を目指してみるのもよいでしょう。
 錫杖寺にも時々犬の散歩コースとしてお参りに来てくれる方がいます。犬が人間にとってよきパートナーであるように、錫杖寺もみなさまにとってよきパートナーでいられるよう、今年も努めてまいります。
 本年もどうぞよろしくお願いします。

合掌

(2018.元旦)
TOPヘ